布芝居のあゆみ

■布しばいのはじめ

1970年時代、東京都稲城市平尾親子読書会「風の子」は10作余の布芝居を作っていました。これが布芝居というものをみたはじめでした。素人の主婦が、こんな活動をしていると目をまるくしたものです。

1990年ごろ、入間おやこ劇場(あそびあーと☆こども劇場いるまの前身)では、ここから布芝居を借りてきて、子ども達にみせました。

1991年秋には、入間でも第1作目の『さんまいのおふだ』を作りはじめました。

 

■なぜ布しばいなのか

出版社に著作権のことで問いあわせたとき、「わが社では、大型絵本もありますが、それではいけないのですか」といわれて、ハッと思いつつも、「紙でできた本と、布でめくって読むときと子どもたちの様子が違うのです」「一緒にみる楽しさもあり、ミニシアターのようでもあるのです」と応えていました。

それからときどき、このことを思い返すのですが、こつこつ描いていく時間が伝わるのではないかと思うこともあります。また「布地は母親の肌につぐ第二の出会い」という素材のぬくもりも伝わるようです。めくるときのひらり、ふんわりというのもよいようです。

なによりも作り手として、描いている時間が「贅沢だなー」と自分たちで思えること、ひとりでは途中でなげだしてしまうかもしれないけれど、皆と一緒に作るという思い、一筆一筆の時間の積み重ねで作品ができあがっていくうれしさ、できあがったものが利用してもらえるよろこびがあります。作り手のこうした思いも伝わるのではないでしょうか。

 

■著作権のこと

つくりはじめた当初はのどかな時代でしたが、パソコン、音楽のダウンロード化など急激な情報環境の変化にともなって著作権の許諾を得ることが難しくなっています。

マス化した作品はいっそう難しくなっていますが、個人発表やできたてほやほやの本の作者との交渉を通して、見つけだすたのしさも味わうようになってきました。そのなかで問われてくるのは、「この作品を子どもたちにどうしても伝えたい」というつくる側の意思が原作者に伝わるかどうかであることがわかってきました。

 

■もうひとつの続けられたおおきなちから

1997年からは入間市の“ドラマフェスタin入間”がはじまりました。ここでの発表が制作継続のはげみになりました。加えて材料費の補助が受けられるようになり、布、作業のしやすいアクリル絵の具が買えるようになりました。それまでは布や水彩絵の具は寄付してもらっていました。絵の具にボンドと水をまぜて描いていたのですが、発色が難しく、乾きに時間がかかって梅雨どきなどは往生していました。

 

■布芝居は未来につながっています

布芝居は、あそびあーとの事務所に一括しておかれていますので、いつでも利用できます。集まりを企画するひと、読むのが得意なひと、もち手をやってみたいひとと、だれでも分担しながらできる気軽さがあります。

2003年からは市の健康福祉センター事業で3歳児健診前の待ち時間にも布しばいの読み聞かせをおこなっていますので、入間の乳幼児は、布しばいを一度は目にして大きくなります。(コロナ禍の影響で2020.3より現在は実施していません)

観た子ども達が、作り手となるときもあるのかしらと想像すると、楽しみです。

今日入間市、埼玉全域でもひろがり、多くの作品がうまれています。稲城から飛んできた種は、埼玉の地でも根づきました。